UPDATE:2009/06/29
部下に伝えることの難しさ
企業再建の仕事で赤字を続けている人材派遣会社(従業員150名)の経営幹部会議を指導している時の話である。
ある営業部長が前月掲げた課題に対する取り組みに対して、忙しかったことと部下が動かなかったことを理由に
できなかったと発表した。
「いくら言っても動かない。部下の能力が低いと苦労する。」
他の幹部からは、いつものことなので仕方がないという空気が流れたが、私は許せなかった。
「忙しかったことはもともと読み込んでいなければいけない。いくら伝えても動かないのはあなたのマネジメント力。
言ったかどうかの問題ではない。伝わらなかったら、何度でも伝え方を工夫して、納得させることが仕事。
マネジメントとは行動を変えさせることである。能力が低いのはあなたの指導力の問題。」
経営力が弱い会社は伝える力が弱い。行動結果のつめ方も甘い。
伝えることの徹底力がないから方針や戦略に粘りがなく、継続しない。
縦の関係・・・組織を通じて言葉は伝わらない。
組織の基本は官僚制組織だという。しかし企業が大きくなり組織の階層が増えれば増えるほど、言葉が伝わらなくなる。
経営トップの言葉を幹部に伝えたら、伝わるのは多くて内容の50%。幹部からマネジャーに伝えたら、そのまた50%。
マネジャーから現場のメンバーに伝えたら、さらに50%。すなわち1割強しか伝わらない。
その割合も50%伝わったらよいほうかもしれません。また中間で内容を端折って伝えることすらある。
本来は部下の立場に立って、より詳しく咀嚼して話すべきで、そうしなければ部下の立場で言葉の意味や目的など
理解できるはずもない。
マネジャーの仕事は部下の行動を変えること。そのためにコミュニケーションが必要である。人は見事に忘る。
メモを取らない事柄は全く覚えていない。もっと言えば聞いていない。人は自分に関心のあることしか耳に入らない。
特に会議での話は壁に向かって話しているようなものと考えたほうが良い。(私達が部下の立場の時そうであったように。)
「コミュニケーションの価値は受けての納得度で決まる。」これがコミュニケーションの原則である。
理解しても納得しなければ行動しない。
そもそも伝わっていることを前提に考えるから腹が立つのである。もともと伝わらないと考えたら楽になる。
だから何度でも言う。先ずはコミュニケーションの質より量。何度も何度も伝えることである。
そして的確な質問で理解度を測る。表情や目つきから納得度を測る。
手間隙はかかるが、集団に伝えるよりは、個人面談がより深く刺さる。
結局個人面談を多く実施しているマネジャーが、徹底力が強いと感る。