Columnコラム

【経営・戦略】利益追求の罠

UPDATE:2009/11/01

『利益=売上-コスト』
新入社員研修で最初に教える経営の公式である。

現在の経済不況は、一過性のもの・我慢すれば通り過ぎるものではなく、構造的なもので
今後もどんどん深まっていく性格のものであろう。
このような流れの中で、経営者は何を考えなければならないのか。

第一に必要なことはキャッシュの確保であろう。運転資金がなくなれば事業を回すことができないからである。
そのための「ムダの徹底的削減」は最優先課題である。

しかしこの「ムダ」という言葉イコール、コストなのか。
そして、よく叫ばれる「コスト削減」の中に「必要な投資」まで含まれてはいないか。

「必要な投資」とは何なのか。

H.ミンツバーグは論文でこのように言っている。
「苦しくなると簡単に効率化の経済性を証明できるコスト削減に走るが、
その結果、無形の価値を犠牲あるいは無視してしまう傾向にある」

「効率化に夢中になっていると、効果を見失ってしまう」という内容で、
従業員のやる気をそいでしまうようなコスト削減、顧客の満足を無視した対応、
社会的価値を落とす事業活動などにつながってはいないかという指摘である。

 

「選択と集中」は利益率を高める。
しかし短期的に成績は良くなっても、中長期的には競争力が落ちる。商品や事業の寿命が短いからである。

アメリカ式経営に見られがちの四半期経営の悪の部分である。
「選択と集中」は厳しい環境を乗り切る唯一の戦略ではない。

今後、業界や市場の成熟化・衰退が深まるに伴って、必要となる「事業の優位性を築く投資」とは何か。

一見無駄に見えても、お客様から見た時の他社にはないサービスの向上や
社員の教育研修や創造性を育む・考える仕組み、基礎研究・技術開発強化や社員の満足度、ロイヤルティ向上など
この構造的不況を乗り切る中長期的な投資を真剣に考えなければならない。

最後に
「利益幅を信奉すれば競争相手に市場を提供することになる(ドラッカー)」
「合理化を進めても長期的には利益を上昇させることはできない(ミンツバーグ)」

 

貴社にとって「必要な投資」とは何か。遅きに失する前に真剣に考える必要があるのではないか。

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