UPDATE:2010/06/08
外部環境が変わると事業の戦略が変わる。事業戦略が変わると必要な組織、人材の質が変わる。
経営者が事業変革を唱えてもなかなか変わらないのは、組織機能や人材を変える仕組みを持たないことであろう。
環境変化をいかに素早く察知し、必要な組織、人材の質を高めるための先行投資をして適合させていくか、
目の前の結果だけを求め、後手後手に回るか。企業の変化対応力が問われる要である。
「事業立ち上げ期」は、ほとんどの場合、社長のトップダウンでビジネスモデルを確立させていく。
事業協力者はいても、基本的に社長の手腕がほとんど全てであろう。
それが、やっとの思いで成長軌道に乗る「成長期」に入ると、いかに早くシェアを拡大し定着させるか、
この時期には社長の分身をいかに早く作るか。体力勝負、単純作業を繰り返せる金太郎飴の部隊を
広く展開することが成長期を支えるエンジンになる。
それが「成熟期」に差し掛かると、今まで頭を使わずに、スローガンに乗っかって号令をかけていた
司令官が、応用問題にぶつかり足が止まる。
社長の分身だけの会社は変革が求められても思考が追い付かない。体が慣性に流される。
今日の飯は食えるのだが、明日の飯のタネは生み出せない。
ここに組織の同質性の限界が来る。
人は見本のモデルがあれば真似できるが、全く新しいモデルを生み出すことはとても難しく、
先送りしてしまうものである。
成熟期が難しいのは、今日の飯を食いつつ、明日のタネも生み出さなければ手遅れになる
ということである。改善と変革の両方が必要となるからである。
「改善とは今までの延長戦でよりうまくやること」
「変革とは過去を否定し新しいことをやること」
その会社で優秀だといわれる方は、改善が得意である。
分析しながら、より効率的に、確率高く、無駄をなくしていくことを合理的にできる。
しかし、改善の究極の結果は似てくる。
無駄を取ったら、いつかは差別化できなくなる。限界が近づく。新しいことをやる以外現状打破できなくなる。
ルールブレイカーが求められる。しかし、新しいことは生み出すための無駄が多い、成功する確率がよくない。
保守本流で出世してきた人、エリートは今までのやり方で評価されてきたから、そのやり方を否定できない。
そして硬直化する。イノベーションジレンマである。経営者が自分の分身ばかり作ると会社は弱くなる。
成熟期には異質性を取り込み、意識改革を図り、過去を否定しないと新しい化学反応は起きない。
お客様目線で事業の本質を見据える、将来を描くことができる、そのために過去を否定することができるか。
真のリーダーは、使命感を抱き、ビジョンを描く。既存の枠組みの不条理に怒りすら覚え、壊すエネルギーを生み出す。
しかしそんなリーダーは自然には育たない。
課題提起と圧力を加える、責任を背負わないとスケールが大きくならない。
時間のかかることかもしれないが、「急がば回れ」、次代の事業を引っ張る、気骨の精神あふれるリーダーの育成が、
この閉塞感の強い経営環境に最も必要なのではないか。