UPDATE:2014/05/21
経営者や人事の責任者の方に人材育成の悩みを相談されることが多いのですが、人材育成について満足した成果を収めている企業は非常に少ない。
人材育成の支援企業としては、人材育成=外部研修と安易に直接結びつけるのではなく、前提として次の4つの問題点を考えてほしい。
①人材育成の目標がない
目標とは育成課題のことです。
階層別、職種別に「何を目指し」「求める人物像」はどういう人物か、そのための課題は何かが具体化されていないことが多い。
そうすると、人材を育てることが、外部研修講師に丸投げになってしまうことになります。すなわち一般論しか教えられません。
実際私も、マネジメント強化の研修、リーダー育成の研修、営業強化の研修などと依頼を受けますが、
課題が抽象的で、具体的にどう育てるのか、人事部も営業部も具体的な要望がないケースが多いです。
そこで責任者の方を取材し、何を目指し、どうあるべきかをお聞きした上で、弊社で課題を整理し、研修プログラムに反映させるのです。
(パッケージ型の研修を提供している会社は、営業する担当と研修を納品する講師が別々なので、うまく研修に反映されない場合が多い。)
また、本人のキャリアプラン(将来どうなりたいか)も不明確で、共有されていないことも多く、到達目標も見えないのです。
この課題も整理する機会を研修の中に設定します。
②人材育成の基準がない
育成課題があったとしても、その達成基準があいまいなことが多い。
部下育成を管理職のミッションにしたとしてもどの能力をどのレベルまで高めることが育成したことになるのか、共通のモノサシがない。
わが社が人事評価制度を作る時には、人事評価の基準を階層別、職種別にコアスキル、専門スキルに分けて設定し、職能資格基準や役職定義などを作り、
具体的にどういう行動が能力を発揮したとされる行動かを明確にします。その基準に沿って、
人事評価と目標管理を連動させて運用し、昇格・昇進のための能力を満たしていく課題設定と部下指導を、上司にしてもらうのです。
③人材育成が評価されない
管理職の役割に部下育成が含まれている企業は多い。しかし、管理職の評価に人材育成の目標が具体的に設定されている企業は稀です。
やってもやらなくても評価に反映されないのであれば、すぐに成果に結びつかない時間のかかる教育的指導をするよりは、成果直結型の仕事をさせたほうが業績に結びつくと考えるでしょう。
育成とは「できないことをできるようにしていくこと」です。
できることだけに集中すれば効率的ではありますが、効率の限界に来ると、次への挑戦、投資がなければ、新たな価値、有効な方法は導きだされません。
④育成スキルがない
人材育成の質をどう計るか?わが社では管理職者に対するマネジメント研修を通して、「教える力」を指導しています。
内容は、目標(課題)設定力、面談力、評価力、関係力、動機付け力、コーチングとトレーニング、OJT、ロープレ、自己啓発など、具体的な能力手法を提供しています。
部下育成をミッションにしながら、その能力手法を鍛えていかなければ、やはり育成は実現しないでしょう。個々バラバラ、属人的な方法で教えていることになります。
育成のレベルや方法を、教える側の話し合いの中から共有し、学習していく「場」の形成を意識的に作らなければ、その能力手法は定着、磨かれて行きません。
以上のように、目標がない、基準がない、評価があいまい、育成スキルも与えられていなければ、人材育成が進まないのは当たり前です。
4つの問題を解決することが人材育成に取り掛かる前提条件になるのではないでしょうか。